複数のメーカーから、さまざまな機能を搭載した無線LANルーターが発売されているので、正直なところ、高機能すぎて、どれを選んでいいのかわからない方も多いのではないでしょうか?
無線LANルーターを選ぶときは、
- 通信規格・速度
- 接続台数
- 家の間取り
の3つのポイントを購入前にしっかりと把握しておくことで、ご自宅の利用環境にぴったりな無線LANルーターを選ぶことができます。
特に最近の無線LANルーターは高機能のものが多く、最新規格や機能を追求すると価格も高くなりがちです。
また利用環境によっては、機能にばかり目がいってしまって、オーバースペックなものを選んでしまっている可能性もあります。
今回ご紹介するTP-Linkの「Archer AX23」は、これまでのTP-Link製品と比べるとシンプルな機能に特化したエントリーモデル。
1万円を大幅に切る値段ながらも、最新の無線通信規格のWi-Fi6(デュアルバンド)、より快適なインターネット接続を実現する次世代インターネット接続方式の「IPv6 IPoE(IPv6 over IPv4)」、さらに話題のメッシュWi-Fiも手軽に構築できるOneMeshにも対応しています。
ミニマム構成だけど、最新規格や最新のテクノロジーに対応。
押さえるべきところはきっちりカバーしています。
まず最初の1台として、検討したいコスパ抜群の無線LANルーターです。
「Archer AX23」の概要
注目の5つの快適ポイント
- Wi-Fi6対応・デュアルバンドで同時接続でも高速通信
- IPv6 IPoE(IPV4 over IP6)対応でピーク時の混雑回避
- 中継器との組合せによるメッシュWi-Fiで広範囲をカバー
- スマートコネクトでSSID1本化、最適な帯域に自動振分け
- 直感的に使える専用アプリで初心者でも簡単設定
製品の仕様について
製品名 | TP-Link Archer AX23 |
本体サイズ | 260.2x38.6x135mm(幅×高さ×奥行) |
本体重量 | 410g(実測値) |
最大接続台数 | 36台 |
推奨利用環境 | 戸建て3階建、マンション4LDK |
ワイヤレス規格 | Wi-Fi 6 IEEE 802.11ax/ac/n/a(5GHz) IEEE 802.11ax/n/b/g(2.4GHz) |
Wi-Fi速度 | AX1800 5GHz:1201Mbps(802.11ax) 2.4GHz:574Mbps(802.11ax) |
Wi-Fi性能 | ・デュアルバンド ・OFDMA ・エアタイムフェアネス ・4ストリーム |
Wi-Fi拡張性 | OneMesh対応 |
Wi-Fiセキュリティ | WPA、WPA2、WPA3、WPA/WPA2-Enterprise (802.1x) |
IPv6 IPoE (IPv4 over IPv6)対応 |
v6プラス・OCNバーチャルコネクト・DS-Lite |
動作モード | ルーターモード ブリッジモード(アクセスポイントモード) |
有線WAN/LANポート | ギガビットWANポート×1 ギガビットLANポート×4 |
CPUプロセッサ | デュアルコア 1GHz CPU |
アンテナ | 高性能固定アンテナ×4(ビームフォーミング対応) |
電源 | 12 V ⎓ 1 A |
システム要件 | Internet Explorer 11/Firefox 12.0/Google Chrome 20.0/Safari 4.0以上の Javaに対応したブラウザ |
パッケージ内容 | Archer AX23 本体、ACアダプタx1、LANケーブルx1、かんたん設定ガイドx1、保証書x1 |
公式サイト Archer AX23(製品仕様)
公式サイト IPv6(IPoE/IPv4 over IPv6)対応確認済みリスト
TP-Link製の無線LANルーターの大きな特徴の1つとして、初心者でも専用アプリを使えば、ガイダンスに従うだけで直観的に設定できる点です。
スマートフォン用設定アプリ「Tetherアプリ」はこちら。
製品の位置づけについて
「Archer AX23」は数あるラインナップを誇るTP-Link製品の中でも、エントリーモデルに位置付けられます。
無線LANルーターを選ぶポイントは、①通信規格・速度、②接続台数、③家の間取りの3つが大きな要素ですが、「Archer AX23」は、
- 通信規格・速度:AX1800(1201+574Mbps)、上位回線(WAN)は1Gbps
- 接続台数:36台
- 推奨利用環境:戸建て3階建、マンション4LDK
での利用を想定している、無線LANルーターということになります。
現在発売されているWi-Fi6対応ラインナップの中から、エントリーモデルから上位モデルまで、代表的なものをピックアップして比較した表がこちら。
CPUのコア数、アンテナ数、無線LAN通信速度、同時接続台数、拡張ポートの有無などで分けられています。
Archer AX23 | Archer AX55 | Archer AX73 | |
CPU性能 | デュアルコア 880MHz | デュアルコア 1.0GHz | トリプルコア1.5GHz |
高性能固定アンテナ数 | 4本 | 4本 | 6本 |
無線LAN速度 | AX1800規格1201+574Mbps | AX3000規格2402+574Mbps | AX5400規格4804+574Mbps |
推奨利用環境 | 戸建て3階建、マンション4LDK | 戸建て3階建、マンション4LDK | 戸建て3階建、マンション4LDK |
最大同時接続台数 | 36台 | 48台 | 80台 |
USBポート |
ー |
・USB3.0 x1 | ・USB3.0 x 1 |
WANポート(上位回線への接続ポート) | ギガビット | ギガビット | ギガビット |
注意すべきところは、③の利用環境については同じになっている点です。
仕様上、カバレッジする広さは参考になりますが、実際には無線LANルーターを設置する居住環境によって左右されるところが多分にあります。
例えば、建物の構造(遮る壁やドアがあるかないか)、居住空間のレイアウト(近くに電波を飛ばす機器や電波に影響を与える金属があるか)、建物の材質(木造かコンクリートか)などによって、電波が届く範囲や強さは異なります。
電波のカバレッジや強弱度については、この後の検証で触れますが、「Archer AX23」は単体ではワンルーム・1LDK~2LDKの利用がベスト。
3LDK~は建物の構造上、電波や速度が弱いと感じたら、中継器を追加するといった使い方が適していると感じました。
「Archer AX23」のレビュー
外観:幾何学的で未来的なデザイン志向
「Archer AX23」は外付けアンテナが特徴のArcherシリーズではおなじみの、マットな表面と光沢のある表面を組み合わせた、スタイリッシュなデザインです。
エントリーモデルのためアンテナは4本に集約、本体も上位モデルのAX72やAX73と比べると、とてもコンパクトで軽量です。
4本のアンテナは、利用環境にあわせて自由に向きを調整することができます。
アンテナは自由に角度を調整可能です。
一般的にマンションや平屋建てのフラットな環境での利用の場合は、アンテナを「垂直」方向にたてることで、電波が水平に広がります。
複数階数の戸建てでの利用の場合は、「扇形」に広げることでアンテナ同士の電波干渉を避けて、電波の届く範囲を調整できます。
また、本体にはスリットが施されているので、排熱性も十分考慮されており、長時間駆動でもほんのり温かみを感じる程度。
常時稼働している無線LANルーターだからこそ、排熱性には気をつけたいところですが、「Archer AX23」はその心配はありません。
外部ポートは有線WAN/LANポートとも、1GbpsのギガビットポートをWANポート×1,LANポート×4を搭載。
無線接続できないデバイスへの接続や、より安定した通信が必要なデバイスには有線接続できるオプションもあるので安心です。
LANポート以外のUSBポートなどはついていないので、USBポートに外付けのHDDやUSBメモリーを接続して、簡易NAS機能を使いたい場合は、Archer AX55やAX72/AX73などの上位モデルを選びましょう。
特長1:Wi-Fi6対応でサクサク高速通信!
「Archer AX23」は最新規格のWi-Fi6に対応しているので、従来の規格Wi-Fi5と比べても、大幅に通信速度が向上。
AX1800規格で、通信速度も合計1.8Gbps(2.4Ghz : 574 + 5Ghz : 1201Mbps)もあるので、動画ストリーミングやゲームのダウンロードも快適に利用できる水準です。
最新のゲーム機「PlayStation5」やVRヘッドセット「Oculus Quest2」はWi-Fi6対応。
Nintendo SwitchやPlayStation4は、Wi-Fi5対応です。
Wi-Fi6は下位互換があるので、無線通信環境をアップグレードしつつも、これまで使っていた旧型デバイスも問題なく接続することができるので安心ですね。
「Archer AX23」単体でのWi-Fi6の実力は?
最新のWi-Fi6に対応した「Archer AX23」での通信速度と無線電波のカバレッジについて、計測してみました。
※上位回線が100Mbpsの環境下で、「fast.com」にて通信スピードを計測
※スマホ用アプリ「Wi-Fiミレル」にて電波のカバレッジを計測
※3LDKスペースで測定
3LDKのスペースでは電波は広範囲に届いていますが、電波の強弱で言えば、ルーターから離れれば離れるほど、弱くなっているのがわかります。
※電波状態:良好(緑)>(黄色)>不良(橙色)
部屋の中央あたりまでは電波はまんべんなく届いており、通信速度も無線LANルーターを設置した周辺とあまり差が感じられませんでした。
私の環境では、「Archer AX23」単体ではこの範囲内であれば、Wi-Fi6のメリットを享受できるといえるでしょう。
上位モデルの計測結果(参考)
参考までに上位モデルの「Archer AX72」「Archer AX73」での計測結果も紹介します。
Archer AX72は、デュアルコアCPU搭載の6ストリーム、AX5400規格。
Archer AX73は、トリプルコアCPU搭載の6ストリーム、AX5400規格の無線LANルーターです。
上位モデル同士ではCPUの差があるものの、私の環境では体感上、通信速度についてはあまり差を感じることはありませんでした。
一方でArcher AX23と比べると、電波のカバレッジは差がありませんが、CPUパワーやアンテナ数のメリットもあり、実際の通信速度はやはり上位モデルのほうがより速い数値がでていることがわかります。
この結果からも、居住環境に依存するものの、
- 「Archer AX23」単体ではワンルーム・1LDK~2LDKのスペースでは快適に利用できる
- 「Archer AX72」や「Archer AX73」といった上位モデル単体では、3LDKのスペースでも十分通信速度をメリットを享受できる
といえるでしょう。
参考記事 「Archer AX72」レビュー記事
参考記事 「Archer AX73」レビュー記事
特長2:メッシュWi-Fi対応で隅々まで届く!
「Archer AX23」は単体では電波が届きにくい場合でも、後付けでTP-Linkの中継器を追加することで、手軽にメッシュWi-Fi網として無線エリアを拡張することができます。
「Archer AX23」は、TP-Link独自規格の「OneMesh」に対応しています。
「OneMesh」は、最大2台まで対応する中継器を増設可能です。
ここでは、OneMeshに対応した無線中継器「RE600X」をメッシュWi-Fiノードとして追加。
ネットワークを拡張してみました。
結果、電波状況は改善し、部屋のすみずみまで届いて安定性が向上。
スピードも上流回線の上限までは達しないものの、かなり改善していることがわかります。
「Archer AX23」はエントリーモデルですが、設置した後からでも、OneMesh対応する中継器を設置することで、手軽にメッシュWi-Fi網を構築できるネットワークの拡張性もポイントです。
特長3:IPv6 IPoE対応でスイスイ混雑回避!
「Archer AX23」は、次世代インターネット接続方式である「IPv6 IPoE(IPv4 over IPv6)に対応しています。
最大のメリットは、従来のインターネット接続に比べると、ピ-ク時の混雑回避が期待できること。
従来のIPv4とIPv6は一般道と高速道路に例えられるように、特にネットワーク回線が混みがちな夜間の時間帯にはストレスのないインターネット接続を実感することができます。
このように、IPv6はこれまでの大多数のかたが利用している回線(IPv4)とは全く別の回線です。
別途対応する回線契約が必要となりますが、4K/8Kの動画視聴やオンラインゲームもより快適な環境で楽しむことができます。
参考(公式サイト) IPv6(IPoE/IPv4 over IPv6)対応確認済みリスト
「Archer AX23」を使ってみた感想
ライトユーザーには過剰と感じる機能ははぶき、できる限りシンプルにした「Archer AX23]ですが、ユーザーの使い勝手を向上するところはしっかり押さえています。
上位モデルでは対応している強力なセキュリティ機能「HomeShield」や「HomeCare」には、残念ながら非対応ですが、子供の使うデバイスの利用をコントロールできる「保護者による制限」や、デバイスごとに通信を優先する設定が可能な「QoS」は、アプリを使って設定が可能です。
設置したい場所の広さや同時接続する端末数、家族構成にもよりますが、通常の使い方ではまず必要十分なスペックでしょう。
手頃な価格設定で最新規格に対応した、コスパ抜群のルーター
「Archer AX23」は1万円を切る価格設定ながら、Wi-Fi6×OneMesh×IPv6(IPoE)に対応した、コスパ抜群の無線LANルーター。
価格のお求めやすさ、セットアップの簡単さ、最新の技術や無線規格対応で、より快適なインターネットを楽しめる、エントリーモデルとしておすすめです。
ひとり住まいや小家族でインターネットに同時に接続するデバイス(テレビ、スマホ、ゲーム、IoT機器等)が少なく、居住スペースの広さがワンルーム・1LDK~2LDK相当で、レイアウトが入り組んでいないのであれば、「Archer AX23」クラスの無線LANルーターが適切でしょう。