新生活がはじまり、新しい環境でスタートするにあたり、通信環境も刷新したいと考えている方もいるのではないでしょうか?
今回レビューする「Archer AX55」は、実売1万円を切る価格ながら、深夜など通信ピーク時にもストレスのないインターネット環境を利用できるIPv6 IPoEに対応した、ミドルレンジの無線LANルーター。
これから新しく無線LANルーターを導入する方から、買い替えを検討している方まで、スペックと機能でも、まず最初に検討してみるに値するバランスがよいルーターです。
「Archer AX55」の概要
注目の5つの快適ポイント
- Wi-Fi6対応・デュアルバンドで同時接続でも高速通信
- IPv6 IPoE(IPv4 over IPv6)対応でピーク時の混雑回避
- 中継器との組合せによるメッシュWi-Fiで広範囲をカバー
- USB3.0ポートに外付けドライブ接続で簡易NAS構築
- WPA3対応、HomeShieldでセキュリティ対策も万全
シリーズ共通の専用アプリ「Tether」をつかえば、初心者でも直観的に設定できるのもポイントです。
製品の仕様について
製品名 | TP-Link Archer AX55 |
本体サイズ | 261.1 × 134.5 × 41.0mm (W×D×H) |
本体重量 | 492 g(実測値) |
最大接続台数 | 48台 |
推奨利用環境 | 戸建て3階建て、マンション4LDK |
ワイヤレス規格 | Wi-Fi6 IEEE 802.11ax/ac/n/a(5GHz) IEEE 802.11ax/n/b/g(2.4GHz) |
Wi-Fi速度 | AX3000 5GHz:2402Mbps(802.11ax、HE160) 2.4GHz:574Mbps(802.11ax) |
Wi-Fi性能 | ・デュアルバンド ・OFDMA ・エアタイムフェアネス ・DFS ・4ストリーム |
Wi-Fi拡張性 | OneMesh対応 |
Wi-Fiセキュリティ | WPA、WPA2、WPA3、WPA/WPA2-Enterprise (802.1x) |
IPv6 IPoE(IPv4 over IP6)対応 | v6プラス・OCNバーチャルコネクト・DS-Lite |
動作モード |
・ルーターモード |
有線WAN/LANポート | ・ギガビットWANポート×1 ・ギガビットLANポート×4 |
USB対応 | USB 3.0ポート×1 対応フォーマット:NTFS, exFAT, HFS+, FAT32 機能:Apple Time Machine、FTPサーバー、メディアサーバー、Samba サーバー |
CPUプロセッサ | デュアルコアCPU 1.0GHz |
メモリ | 512MB |
アンテナ | 高性能固定アンテナ×4(ビームフォーミング対応) |
電源 | 12 V ⎓ 2 A |
パッケージ内容 | Archer AX55 本体、電源アダプター×1、LANケーブル×1、かんたん設定ガイド×1、保証書×1 |
公式サイト Archer AX55(製品仕様)
製品の位置づけについて
「Archer AX55」はArcherシリーズの中で、エントリーモデルである「Archer AX23」とミドルハイモデル「Archer AX73」のちょうど中間にあたるモデル。
無線LANルーターを選ぶポイントとして、①通信規格・速度、②接続台数、③間取りの3つが大きな要素ですが、「Archer AX55」は、
- 通信規格・速度:AX3000(2402+574Mbps)、上位回線(WAN)は1Gbps
- 接続台数:48台
- 推奨利用環境:戸建て3階建て、マンション4LDK
での利用を想定している、無線LANルーターです。
現在発売されているWi-Fi6対応のラインナップに中から、代表的なモデルをピックアップして比較した表がこちら。
「Archer AX55」はラインナップの中ではミドルレンジの無線LANルーターといえるでしょう。
CPUのコア数、アンテナ数、無線LAN通信速度、同時接続台数、拡張ポートの有無などで分けることができます。
Archer AX23 | Archer AX55 | Archer AX73 | |
CPU性能 | デュアルコア 880MHz | デュアルコア 1.0GHz | トリプルコア1.5GHz |
高性能固定アンテナ数 | 4本 | 4本 | 6本 |
無線LAN速度 | AX1800規格1201+574Mbps | AX3000規格2402+574Mbps | AX5400規格4804+574Mbps |
推奨利用環境 | 戸建て3階建、マンション4LDK | 戸建て3階建、マンション4LDK | 戸建て3階建、マンション4LDK |
最大同時接続台数 | 36台 | 48台 | 80台 |
USBポート | ー | USB3.0 x1 | USB3.0 x1 |
WANポート(上位回線への接続ポート) | ギガビット | ギガビット | ギガビット |
推奨利用環境については、この表ではスペック上同じ広さになりますが、経験上、実際には無線LANルーターを設置する居住環境に左右されるところが多分にあります。
例えば、建物の構造(電波を遮る壁やドアのあるなし)、レイアウト(近くに電波を飛ばす機器や電波に影響を与える金属系のもののあるなし)、建物の材質(木造かコンクリートか)などによって、電波への影響度がかわり、届く範囲や強さが違ってきます。
Archerシリーズについては、過去レビュー記事を公開しています。
各モデルにより異なるスピード感や電波の届く範囲などについては、下記リンク先よりレビューを参考にしてください。
レビュー記事 Archer AX23(エントリーモデル)
レビュー記事 Archer AX73 (ハイエンドモデル)
「Archer AX55」のレビュー
外観:放熱性にすぐれたスリットが施されたシャープなデザイン
「Archer AX55」は、外付けアンテナが特徴のArcherシリーズではおなじみの、マットと光沢のある表面を組み合わせた、モダンなデザインです。
同形状のAX72/73では菱形の幾何学的なモアレ(縞模様)に対して、AX55の本体上面にはシャープなスリットが施された斬新で都会的なクールな印象。
特徴的なデザインですが、本体上面・底面とも、通気孔が施され、放熱性を考慮された構造になっています。
連続稼働するルーターだからこそ、大切なポイントですが、コンパクトな本体ながら、長時間稼働していてもほんのり熱を感じる程度で安心して使えます。
外部ポートも充実。
外部ポートは本体背面に集約されているので、アクセスがしやすくなっています。
有線LAN/WANポートとも、1GbpsのギガビットポートをWANポート×1、LANポート×4を搭載。
有線LANも充実しているので、無線LANを接続できないデバイスや、より安定した通信が求められるデバイスには有線で接続できるので安心です。
またUSB3.0ポートが1つあるので、外付けストレージを接続することで、ネットワーク経由でストレージを共有できる「簡易NAS」機能を使えるところがポイント高し。
特長1:Wi-Fi6対応でサクサク高速通信!
「Archer AX55」は最新の無線通信規格Wi-Fi6に対応しています。
従来の規格Wi-Fi5と比べると、最大通信速度も9.6Gbps(理論値)と大幅に向上しています。
AX3000規格で、通信速度も合計3Gbps(2.4Ghz:574Mbps+5Ghz:2402 Mbps)もあるので、4K・8KクラスやVRの高画質な動画ストリーミングやギガクラスの大容量のゲームダウンロードも快適に利用できるレベル。
最新のゲーム機「PlayStation 5」やVRヘッドセット「Oculus Quest 2」はWi-Fi6対応なので、快適な通信環境のおかげで、新しい体験をストレスなく楽しむことができます。
「Archer AX55」単体での実力は?
W-Fi6に対応した「Archer AX55」の通信速度と電波のカバレッジを検証してみました。
※上位回線が100Mbpsの環境下で、「fast.com」で通信計測スピードを計測
※スマホ用アプリ「Wi-Fiミレル」にて電波のカバレッジを計測
※3LDKスペースで測定
ご覧のとおり、3LDKのスペースでは居住スペースの中央あたりまでは、電波はまんべんなく届いています。
ただ、電波の強さはルーターから離れると安定せず、弱くなっていることがわかります。
※電波状態:良好(緑)>(黄色)>不良(橙色)
結果的に、わが家の環境では、通信スピードもルーターから離れている部屋の隅では通常のネットサーフィンではストレスは感じられないものの、家族が同時に使ったり、動画視聴などをするにはもう少し通信速度や電波のカバレッジが欲しいところです。
それでも、以前計測したWi-Fi5ルーターとの比較では、大幅に改善していることがわかります。
特長2:メッシュWi-Fi対応で広範囲をカバー!
「Archer AX55」は単体では電波が届きにくい場合でも、後付けでTP-Linkの中継器を追加することで、手軽にメッシュWi-Fi網として無線エリアを拡張することができます。
「Archer AX55」は、TP-Link独自規格の「OneMesh」に対応。
もう少し電波を強くしたい、安定させたいなという時に便利な機能です。
OneMeshは、最大で中継器を2台まで増設可能です。
今回は、OneMesh機能に対応したアンテナ内蔵型の中継器「RE600X」を使って、メッシュWi-Fi網を構築してみました。
ご覧のとおり、電波状況は単独で設置したときよりも大幅に改善してることがわかります。
電波は部屋のすみずみまで届き、電波の強さも安定。
肝心の通信速度も、上流回線の上限値近くまで改善しています。
「Archer AX55」単体でもWi-Fi6対応デュアルバンドなので、広範囲をカバーしますが、自宅の環境によっては中継器を追加することで電波状況を改善することができます。もし電波が弱いかな?と思ったら、ぜひメッシュWi-Fiにしてみましょう。
特長3:IPv6 IPoEでピーク時でも混雑回避!
「Archer AX55」は、次世代インターネット接続方式である「IPv6 IPoE(IPv4 over IPv6)に対応しています。
最大のメリットは、従来のインターネット接続と比べると、ピーク時の混雑回避が期待できる点です。
従来のIPv4とIPv6は一般道路と高速道路のようなもので、IPv6 IPoE(IPv4 over IPv6)では、特に夜間などネットワーク回線が込み合っている時間帯に、ストレスなくインターネットがつながることを実感できます。
対応する上位回線の契約が必要になりますが、今では主流になりつつある4Kや8Kといった高画質の動画視聴や、遅延のない(低レイテンシーな)安定した通信が求められるオンラインゲームも、快適な環境で楽しむことができます。
その意味でも、これから対応回線を契約しようとしている方にもおすすめしたいモデルです。
参考 IPv6(IPoE/IPv4 over IPv6)対応確認済みリスト
既にIPoE(v6プラス・OCNバーチャルコネクト・DS-Lite)に契約している方であれば、特に設定する必要もなく、ONUからLANケーブルを「Archer AX55」に接続するだけで自動検出して、ネットワークに接続できます。
特長4:簡易NASも簡単構築!
本体背面にUSBポート(USB3.0×1)を搭載しているので、外付けのSSD/HDDやUSBメモリーなどを接続することで、「簡易NAS」を構築することができます。
「簡易NAS」とは、Wi-Fiルーターに接続した機器をネットワーク経由で利用できるファイルサーバ機能です。
パソコンやスマホから共通でアクセスできるストレージとして使うことができます。
例えば、自宅や外出先からでも、インターネット経由で「簡易NAS」に保存している写真や動画、文書などのデータに、家族が安全にアクセスできるようになります。
簡易NASの設定方法
「Archer AX55」の設定完了後、共通ストレージとして使いたい外付けSSD/HDDをUSB3.0ポートに接続します。
USBメモリーの場合も同様に、USB3.0ポートに直接挿しこむことで、簡易NASとして使うことができます。
次に、簡易NAS機能の設定をするために、スマホのアプリ「Tether」ではなく、パソコンやスマホのWEBブラウザーから、ルーターの管理画面にアクセスします。
管理画面のURL tplinkwifi.net
外部からアクセスする場合は、NASへのアクセス認証をかけておくと安心です。
管理画面より、アカウント毎に設定を変更することができます。
簡易NASへのアクセス方法(PC)
パソコンから、Archer AX55のUSBポートに接続したストレージにアクセスする場合は、エクスプローラーを開き、アドレスバーに\\(ルーターのIPアドレス)か\\TP-Shareと入力します。
ネットワークドライブとして割り当てれば、パソコンからいつでもクイックにアクセスが可能です。
簡易NASへのアクセス方法(スマホ)
スマホの場合は、FTPManagerやVLCなどNASへ接続できるアプリや、iOS純正の「ファイル」アプリでアクセスすることができます。
私がよく使っているiOSアプリでは、「FTP Manager」がおすすめです。
FTP ManagerでNASへアクセスするためには、接続先(FTPアドレス)を登録します。
手順として、まずアプリを起動したら、①アプリの「+」をタップして、新しい接続先を追加、②「FTP」を選択します。
次に、③無線ルーターの管理画面のアクセスアドレスに記載されている、FTPサーバのアドレスを新しい接続先として、アプリの「ホスト名/IPアドレス」に入力します。
表示名は自由に設定できますが、ここでは「TP-Link」としています。
接続先として、先ほど登録した項目が追加されているので、こちらからファイルにアクセスすることが可能です。
特長5:QoSやセキュリティ対策も万全!
「Archer AX55」は最新セキュリティのWPA3に対応しています。
さらに「TP-Link HomeShield」を利用することで
- ネットワーク内にセキュリティ上の弱点がないか診断
- 子供たちのインターネット利用時間を制限
- 不適切なコンテンツをブロック
- QoS設定
など、インターネットを安全かつ快適に利用するための機能が、無料で使えます。
WEB会議やオンライン授業に安定して接続できるように、QoS設定で通信帯域を優先したり、お子様のゲーム時間やWEBサイトのアクセス制限をアプリを使って簡単に設定することができます。
「Archer AX55」を使ってみた感想
「Archer AX55」は高機能にも関わらず価格も抑えられているので、コスパがよいルーターです。
正直なところデメリットを探すのが難しいのですが、あえて言うと、WANが1Gbpsまでということと、デュアルバンド対応というところでしょうか。
もし1Gbps以上の回線を契約しているとか、トライバンド対応のルーターが欲しいとなると、Archerシリーズでも最上位機種に相当する「Archer AX90」などが選択肢になってくるでしょう。
※「Archer AX90」はWANは2.5Gbps対応のトライバンド無線LANルーターです。
1万円以下で買える拡張性高く、バランスがよいV6対応Wi-Fi6無線ルーター
「Archer AX55」は、Wi-Fi6×OneMesh×IPv6(IPoE)に対応した、バランスのよい無線LANルーター。
これだけスペックよくて、Amazonなどでは実売1万円以下で購入することができます。
※Amazonでは価格変動はありますが、直近では8,480円~9,800円の間で販売されています。
将来的にメッシュWi-Fiを構築したい方から、手持の外付けストレージを使って、USB3.0ポート経由で簡易NASを手軽に構築したい方、HomeShieldを使って手軽にセキュリティ対策をしたい方まで、機能性を求めるユーザーにも満足できるスペックで、長く使えるので経済的です。
今契約している上位回線が1Gbpsまでの方であれば、まず選んで間違いないモデルでしょう。