一般的に1日は24時間という限られた時間枠ですが、時間の使い方を工夫することで忙しさから解放されるだけではなく、普通の人の4倍以上仕事をこなして、2倍以上の自由時間を確保することができる方法があるのだとすれば知りたくならないでしょうか?
これを実現するための具体的な実践方法が「神・時間術」です。
「神・時間術」は、いわゆる時間術に関するノウハウ本のひとつですが、脳のパフォーマンスを最大まで引き出すことにフォーカスし、精神科医でもある著者樺沢紫苑さんならではの脳科学的な根拠とご自身の経験に基づく仕事術をもりこみながらユニークな視点で「時間術」を体系化しています。
根底にある理論としては、午前中が「脳のゴールデンタイム」であるということ。
脳科学的には最高のパフォーマンスを発揮できる時間帯にそれにあった仕事をすることで仕事効率を2倍以上に高めることができることが証明されており、この時間帯こそが午前中(起床後の2~3時間)です。
この朝の時間帯を有効に活用することで、通常よりも効率よく仕事をこなし、結果的に自由な時間をうみだすことができるのです。
■「集中力」を中心に時間を考える
1.1日を集中力×時間の二次元時間で考える
まずこちらのチャートをご覧ください。
横軸は時間という期間、縦軸は集中力で表現されています。
ここで注目するポイントは「集中力」×「時間」で表される面積の大きさの推移で、この面積が「集中時間」に相当します。
集中力は仕事効率ともいえるので、集中力(仕事効率)×時間=仕事量になります。
つまり、集中力が高まる時間帯に仕事をおこなうことで、こなせる単位時間の仕事が増えて、結果的に仕事効率がアップし、時間の短縮につながるというのです。
このように1日を横の時間軸だけではなく、縦軸の「集中力」とあわせて「集中力」×「時間」の二次元時間で考え、集中力の高まる朝の時間帯を活用することで、1日24時間の壁を突破するこができます。
2.集中力が自然と高まる時間帯に集中仕事をする
「集中力の高い時間」は起床後の2~3時間以外にも、休憩した直後や終業間際の時間帯、締め切りの前日等が該当します。
従って、まず最初に仕事を「集中仕事」と「非集中仕事」に分けて、集中仕事を集中力の高い時間帯である午前中にあてることで効率化をはかることができます。
仕事の中でもっとも重要なもの(集中力を要する重たい仕事)を朝のその時間帯にもってくるなどの工夫が必要です。
一方で脳負荷の少ない「非集中仕事」、例えばメールを読んだり、会議にでるなどは、集中力の低い時間帯に行うとよいと言えます。
割り振りの具体的な実践方法としては、「To Doリストの活用」が挙げられています。
作成にあたっては、重要度や優先度以外にもプラス「集中度(集中力が必要がどうか)」を加味します。
またスマホやPCなどでデジタルに書くのではなく、アナログ的に紙に書いて机の見えるところに貼ることで、効率的にタスクが確認できるのでオススメとのこと。
■脳の機能を最大に生かす「集中力」の高め方
1.15・45・90の法則
唐澤さんの仮設によれば、人間の集中できる持続時間単位は15分・45分・90分。
15分は人間がかなり深い集中力を持続できる最小単位で、15分を1セットとして3セット組み合わせた45分、さらにその2倍の90分を仕事をおこなう集中時間単位と考えるとよいそうです。
最大の時間単位は90分、これは大人がなんとか集中できる時間の限界であり、ちょうど45分の間に休憩をいれることで、さらに集中することができるようになります。
そして15分仕事、45分仕事、90分仕事といった風に時間単位によって行う仕事を分類し、必ずインターバルをいれること。
例えばPC等で資料作成などの仕事をする場合(90分)は仕事を開始してちょうど45分前後の40-50分に1回休憩をいれると効率がよくなります。
一般的に1日24時間という概日リズムに対して、人間の体内リズムは90分周期(ウルトラディアンリズム)と言われ、覚醒度の高い90分と眠気の強い20分が交互に訪れる脳のサイクルが存在します。
これは睡眠中のレム睡眠とノンレム睡眠の90分周期、5-20分のインターバルと非常に似ていますね。
ただし、この集中の持続時間はあくまでも目安であって個人によって異なるため、自分にとって最適な集中時間をつかむことが重要です。
自分なりに検証して心地よい集中力のリズムを知り、うまくそのリズムにのること(集中力の波乗り)が仕事術の基本になります。
2.雑念排除
集中力を高めるためには、集中力の高まる朝の時間帯や個人特有のリズム以外にも、特に雑念を排除して集中しいて仕事ができる環境を整備することが大切です。
具体的な雑念とそれに対する対処方法は以下の通り。
・物による雑念 →机の整理整頓し、探し物がすぐに見つかるようにする
・思考による雑念 →To doリストを作成して、雑念を書き出すことで雑念を消去す)
・人による雑念 →電話や声がけ防止のため、行きつけのカフェや会議室などの集中できる空間でおこなう
・通信による雑念 →携帯・スマホ電源オフ、ネット環境遮断する
3.制限時間仕事術
一般的に人は追い込むことで、脳内にノルアドレナリンが分泌されて集中力と学習能力が高まり、脳が最高のパフォーマンスを発揮できるようになります。
この仕組みを利用することで、仕事の効率を高めることができます。
例えば、制限時間を決めてストップウォッチをつかって時間を見える化することでさらに効率がアップします(ストップウォッチ仕事術)。
また締め切り日を設定して厳守する、できればその締め切り日の後に旅行等の動かせない予定をいれることで、100%の締め切りが厳守できる(ケツカッチン仕事術)等の仕事術が有効です。
■「集中力」の高まる朝の活用
1日でもっとも集中力の高まる時間帯は「朝の時間」ですが、その時間帯をどのように活用するのかでその1日が決まります。
朝起床してスッキリした状態で仕事に取り掛かるためのセロトニン活性化のオススメの方法として、以下の5つ紹介されています。
1)朝5分のシャワー(朝ランニングや散歩よりも簡単)
2)カーテンをあけて寝る(朝日を浴びて身体リズムをつかさどるセロトニンを活性化)
3)不動明王起床術(朝日のはいる部屋で5分間目をあけておくとセロトニンのスイッチがオン))
4)リズム運動(最低5分以上、?ウォーキングやジョギング、階段の昇降、首回し運動、ラジオ体操、水泳など)
5)咀嚼(朝食時に1口分を20回以上よく噛んで食べることにより脳を活性化)
一方で逆にやってはいけないこととして、私にとっては習慣化されているので意外な盲点でしたが、テレビをみる習慣とのこと。
起床してから仕事にとりかかるまで、余計な情報をいれずに情報を遮断することが、集中力の高まる朝時間を最大活用する上でのポイントです。
またサラリーマンなど集中時間が朝の通勤時間に重なっていることも多いので、例えば2時間早起きして会社の近くのカフェで自分の時間を活用すると、有効活用できます。
仕事に限らず、資格勉強、読書、語学などをおこなうことで、朝の2時間は「最高の自己投資時間」となりうるのです。
■「集中力」のリセット方法(昼・夜)
一方で、朝のゴールデンタイムを過ぎて集中力が低減する午後の時間帯をどう対処するのか?
一般的に「集中力」を高めることは難しいですが、「疲れる前に休む」ことで集中力を回復できます。
昼からは適切なタイミングで「休息」をいれて、脳を休めること。
その代表的な特効薬が「睡眠」をとることです。
また「有酸素運動」でリセットすることも有効です。
集中力を休息(睡眠や有酸素運動など)でリセットすることにより集中力が回復し、結果的に狭くなりつつある「集中力×時間」の「集中時間」の面積を広げることができるのです。
神・時間術では、集中力を減らす生活習慣を避けて、集中力を高める生活習慣を意識することが大切で、その意味でも睡眠不足は論外だといえるでしょう。
具体的な実践方法はいくつか紹介されていますが、ここは以前ご紹介した睡眠に関わる「眠活」の記事が参考になります。
■仕事の時間を最大限に活かす「時間創出仕事術」
以上、「集中力」が高まるできる時間帯の理解と「集中力」をリセットする方法はわかりました。
その上で「集中力」の高まる時間において仕事のやり方を工夫することで、さらに効率的に仕事をこなすことができ、それによりまた新しい時間を創出することができます。
著者の実践している時間創出仕事術としていくつか紹介されていますが、その中でもユニークなのは、「今」にコミットして生きる「今でしょ仕事術」です。
例えば、
・すぐ終わる仕事の基準を2分として、瞬間的に決める「2分判断術」。
・日々の決断は30秒で即断即決する「30秒決断術」。
などです。
また、今すぐに決めることができないものは「未決」を判断、あるいは「保留」を決断して、「いつ」決めるかなどを決断することで脳のワーキングメモリーを節約できるのです。
このあたりは自分でもはっきり意識しないまま習慣化されていることもありますが、改めてなるほどなと納得させられたところがありますね。
■自由時間を最大限に活かす「自己投資&リフレッシュ術」
脳のゴールデンタイムを時間創出仕事術で効率的に仕事を行うことができれば、結果として自由時間がうまれます。
それでは、その創出した新しい自由時間で何をするのか?
まず著者は自由時間を「自己投資」と「能動的娯楽」、「楽しむ」の3つに使うべきだと強調しています。
創出した自由時間に仕事はしないで、自分のメインスキルに自己投資することをすすめています。
そうすることでさらに効率的に仕事をこなせることにつながるというのです。
仕事を効率的にこなすことができると、さらに自由時間がうまれ、自己投資の時間をつくることができる。
つまり、自己成長と時間創出のポジティブスパイラルの仕組みを醸成することができるのです。
もちろん仕事に関わるメインスキルを磨くこと以外への自己投資もありますが、まずは短期投資として考えると、メインスキルを伸ばす自己投資を優先するべきとのことのほうが効率的です。
それができた上でその次に長期投資、将来へむけての地道な勉強をするのがよいだろうとのこと。
メインスキルをしっかり鍛えて自由時間をうみだす基礎力を養った上でその他スキル、仕事力アップのために自由時間を投入していくのが最も効率のよい勉強法であり、時間術なのです。
また自己成長の観点からも、能動的な娯楽に時間を使うことをすすめています。
能動的娯楽の代表的なものは「読書」です。
読書は集中力を高めるトレーニングとなり、高い集中力が維持された状態(フロー)を鍛え、成長させることができる能動的な娯楽です。
それに対して受動的娯楽とはただ漫然とテレビをみる等ですが、読書と同じく気づきをまとめる(アウトプットする)ことによって能動的娯楽へ変換することができます。
これはテレビ視聴に限らず、何をするにしてもアウトプットを前提に集中力を高めて、実際にアウトプットすることによってスキルを高めることで能動的娯楽に変換できる、つまり自己投資時間に変換することができるのです。
「集中力」には仕事も遊びも関係はありません。
高い集中力を発揮できる人は集中力×時間=集中時間が多く、仕事効率も高く、且つ遊び(趣味)においても楽しむことに集中することができるのです。
「神・時間術」まとめ
今回、この本をきっかけに「集中力」の高まる時間を最大限に利用すること、そしてそれ以外の時間帯でも集中力を高める術によって効率的に仕事をこなすことができる方法を学ぶことができ、これまでの習慣や仕事術を見直す良いきっかけになりました。
あとは自分の中で見習うべき要素は積極的に取り入れて、習慣として定着させるための実践あるのみです。
今後はここで学んだノウハウをベースに、日々の生活の中で集中力を鍛えるトレーニングを行うことで自由時間を創出し、さらなる自己成長のためにスキルアップ(自己投資)を実践していこうと思います。
脳科学の観点から非常に理にかなった時間術で納得感がありますので、ぜひご一読を。