破産予備軍のポイントチェック
質問です。あなたは下の3つの質問にいくつ該当するでしょうか?
・昨年1年間でいくら貯金できたかどうかわからない
・生命保険は何年も見直しをしていない
・住宅ローンの60歳時の残高を知らない
もし、1つでもあてはまるのであれば、”定年後破産予備軍”として要注意です。
FP深田さんの「50代から始める”お金”改革 定年後破産しないために今やるべき3つのこと」はそんな方々にぴったりのガイド本。
これまで「未来家計簿で簡単チェック!40代から間に合うマネープラン」や「あなたのお金をみえる化しなさい」と同じく、まず現在の家計の収支(家計の決算書)を把握することから始めることをすすめています。
家計の決算書を作成したら、後は定年後という将来にむけて家計改革を行います。
これは50代に限らず、40代、30代と早ければ早いほどよい。
ポイントは年収の多い少ないではなく、「時間」であること。つまり定年後にむけて準備できる時間がどれだけあるのかが大切です。
お金改革のポイントは3つだけ、家計の収支決算、保険の見直し、住宅ローンの見直し
この書籍で書かれている65歳からの年金生活にソフトランディングするための「お金改革」のポイントは、シンプルに3つだけです。
(1)今の家計の収支決算をし、現状を把握する
(2)生命保険の見直し
(3)住宅ローンを見直し、60歳までに完済する計画を立てる
人生にはお金を貯めやすいタイミングがあります。特に50代で子どもの教育費がかからなくなった家計は、老後に向けた貯蓄のラストスパートをかける絶好の時期です。 「家計の収支決算」「保険の見直し」「住宅ローンの見直し」。この3つを実行すれば、老後資金を500万~1000万円くらい増やすことも十分に可能とのこと。
積立による自分年金構築だけではなく、生命保険や住宅ローンの見直しをおこなうことで無駄な出費を抑制して、無理なく老後の準備をはじめるきっかけとして読むには手ごろなボリュームです(字大き目で255ページ)。
私の場合は、(1)家計の決算書については、竹川美奈子さんの「あなたのお金をみえる化しなさい」を読んだことをきっかけにより精度を高めたものを作成しました。ここでわかったのは意外と車関係の維持費用がかかるということ。
一方、(2)生命保険についても一度見直しをかけました(結果的に変更せず現状維持)。「あなたのお金をみえる化しなさい」や「定年後破産」でも書かれている通り、”保障設計ピラミッド”による生命保険の保障内容の見直しです。
(3)については昨年末に住宅ローンをより低金利な金融機関で固定へ変更しました(固定か変動金利かは個人の考え方次第です)。そして定期的な繰上げ返済(期間短縮)の実行です。実際に将来的なコスト面で借換え効果が非常に効いていますし、なにより長期固定低金利に変更したことで(従来は段階金利・複数金融機関)精神的にも楽になりました。たんたんと繰り上げ返済を実行していくだけです。
保証設計のピラミッドとは?
意外と知らないのが社会保障だったり職場の保障内容です。まずここから調べることをはじめるべきです。
順番としては下から上へみていくと、最後に民間の生命保険でまかなうべき保証金額を把握することができます。
ありがちなのは上から下へで、まず生命保険から考えてしまう傾向があるので、必要以上の無駄な出費がないのかをチェックするには「生命保険の見直し」が有効です。十分な貯蓄(「定年後破産」によれば、医療費として200万円程度)があれば医療保険は卒業できるということになります。
60歳と65歳の節目ですべきこと
最後の約50ページでは、60歳と65歳という節目ですべきこと、定年退職に備えて知っておくべきことが説明されています。
60歳では、家計の決算書づくり(支出と収入の変化を把握)、保険の見直しと生活費のダウンサイズ(保険料を再度絞り込む、生活費の縮小)、退職金運用の注意点を知る。再雇用で働いて貯蓄を増やす一方で、退職金には手をつけないこと。
60歳時点での退職金を含む、金融資産の金額を把握しておくこと。この金額で65歳以降で年金で不足する部分をカバーすることになります。
65歳では、再々度の決算書作成(年金収入と予想支出額を試算、1年間の取り崩し金額を把握)、特別支出の見積もり(住宅・車・病気やけが)、年金生活に慣れる(資金繰りに慣れる)。
65歳時点では貯蓄最低金額として2,000万円を確保しておくこと(私は最低でも3,000万円で想定)。1年あたりの取り崩し金額は特別支出を除いて、50万円程度に抑えること(年金+取り崩しで生活するサイクルに慣れる)。つまり、2,000万円÷50万円=40年相当分(特別支出考慮せず)。
定年後のお金のやりくりと生命保険の見直しに関しては一読の価値あり
全体的に平易な文体で書かれておりボリュームも軽めではあるものの的確に書かれているので、この手の本を読んだことがないかたにおすすめです。
(50代とはいわず、30代後半から40代の方にも)ただ同様の内容のものとしては、竹川美奈子さんの「あなたのお金をみえる化しなさい」が個人的によいなと思いますが、後半部分(60歳時点、65歳以降)の考え方については参考になります。
また生命保険や住宅ローンの見直しに関する著書を数多く執筆されているので(私も実際の生命保険の見直しの際には彼女の著書を含めて何冊か読みました)、その領域に関してアドバイスが欲しいかたにもおすすめできます。
定年後破産を防ぐ7つのヒント
たまたま日経新聞に著者深田さんのコラムが掲載されていました。
「定年後破産を避けるため、50代ですべきこと」(日経新聞)
この中で定年後破産を防ぐ7つのヒントとして、以下のポイントを紹介されています。
①ローンをすべて60歳で返し終える
退職金でローンを返済するのではなく、50代のうちにローンを見直して60歳までに完済できるように見直す。残債が多いと老後資金として残すべき退職金が大きく目減りしてしまうリスクをさげる。
②ローンの繰り上げ返済は年間貯蓄額の半分を目安に
60歳完済を目指してローンの繰り上げ返済をする場合でも、繰り上げ返済にあてるのは「1年間に貯蓄できる額の半分」を目安にする。繰り上げ返済ばかりして手元にキャッシュが残っていないと万が一のときにも困りますので、老後に向けて着実に貯蓄を増やしながらローンを減らすことが大切とのこと。
私も実際に年間貯蓄額の半分を積立投資に、残りを年末のタイミングで住宅ローンの繰り上げ返済にあてれるようにしています。
③60~65歳の間に貯蓄を減らなさい
老後の生活設計は、60~65歳も働き続けることを前提にする。働けるうちは働いて少しでも蓄えを増やしておく。60歳以降、収入がダウンした場合は貯蓄は無理にしなくてもよいですが、65歳までは収入の範囲で生活して、貯蓄総額を減らさないようにするのがポイント。こちらは著書でも強く指摘されている点です。
④生命保険を見直す
⑤医療保険を見直す
医療保険は働き盛りのときは入院時の収入をカバーするために必要なケースもありますが、前述のプロセスで社会保障・企業保障を把握した上で最終的に民間の生命保険で保障すべき必要な金額を算出すること。
50代、60代になればある程度(200万円程度)は医療費としてすぐに使える貯蓄がたまっているのであれば、だれもが加入している健康保険による公的保障があれば民間の医療保険が必要ない人も多いので、現在加入している保険が本当に必要かどうかを見直すタイミングでもあります。
⑥家計の収支決算をし、現状を把握しておく
将来を予測して今の無駄を早期に発見するためにも、家計の収支決算書を作成する。
現在の生活費を見直すことで無駄を整理して貯蓄にまわせる資金を捻出できる可能性もあります。
⑦「自分へのごほうび」はそろそろ卒業する
独身の場合は自由に使えるお金が多いため、「自分へのごほうび」としての支出が多い傾向があります。⑥で作成した決算書をベースに年間で使える総予算を決めた上で、その範囲内での出費にとどめることが大切です。