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メッシュWi-Fiルーター「Deco」シリーズなど、無線LAN製品開発でリーディングするTP-Linkより、初代Decoをアップグレードしたモデル「Deco S7」が発売されました。
価格据え置きながら、Wi-Fiの高速化と6ストリーム対応、有線ポートの増加など機能面で強化された「Deco S7」は、これからメッシュWi-Fi導入を検討されている方にぴったりなエントリーモデルです。
今回、検証のタイミングでインターネット回線を1Gbpsに切り替えたこともあり、わが家の新しいネットワーク環境でどこまでその性能がでるのか、Wi-Fiの通信速度とカバレッジについてレビューします。
「Deco S7」の概要
3つの注目ポイント
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製品仕様について
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製品名 | Deco S7 |
メーカー | TP-Link |
本体サイズ (W×D×H) | 90.7 × 90.7 × 162.3 mm |
本体重量 | 約357g(1台の実測値) |
プロセッサー | 1.2 GHz CPU |
最大カバー範囲 (利用間取り目安) |
1パック:190m2(1~2LDK) 2パック:360m2(2~4LDK) 3パック:520m2(3~5LDK) |
最大接続台数 | 100台 |
無線通信規格 | Wi-Fi 5 IEEE 802.11ac/n/a 5 GHz IEEE 802.11n/b/g 2.4 GHz |
無線通信速度 | AC1900 5GHz: 1300Mbps (802.11ac) 2.4GHz: 600Mbps (802.11n) |
Wi-Fi性能 | デュアルバンド、3×3 MU-MIMO |
対応メッシュ規格 | 802.11k/v/r |
Deco最大増設台数 | 最大10台まで可能 |
動作モード | ルーターモード、ブリッジモード |
セキュリティ規格 | WPA-Personal、WPA2-Personal |
LANポート |
各ユニットごとにギガビットポート(1000BASE-T)×3 |
対応OS |
Android 4.4 以上、iOS 9.0 以上 |
パッケージ内容 |
Deco S7 (1パック):Deco S7 ユニット×1、LANケーブル×1、電源アダプター×1 |
公式サイト Deco S7(製品仕様)
同梱物・設定方法について
同梱物について
「Deco S7」の同梱物は、本体とACアダプターに加えて、LANケーブルが1本付属しています。
複数パック購入した場合も1本のみ付属しているので、2台目・3台目の子機で有線LANに接続してイーサネットバックホール機能を使いたい場合は、別途ケーブルを用意する必要があります。
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機器設定について
「Deco S7」はDecoシリーズ共通のスマートフォン用アプリ「TP-Link Deco」を使って、機器の各種設定を行います。
初期設定から、機器の追加・導入後の設定変更・本体のファームウェアノアップデートまで、すべてスマホのアプリで完結します。
「Deco S7」のレビュー
外観:スタイリッシュで無駄のないデザイン、省スペース設計
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TP-Linkの初代メッシュWi-Fi「Deco M5」の後継機種「Deco S7」は、旧モデルから大きくデザインを変更。
現在のDecoシリーズとおなじ円筒形でスリム、場所をとらずに設置しやすいのがポイントです。
カラーリングも、ブラック&ホワイトのツートンカラーでスタイリッシュ。
デザイン家電のように、リビングや書斎、寝室でも自然になじみます。
特長1:デュアルバンド×6ストリームで高速・低遅延
「Deco S7」は現在主流になりつつあるWi-Fi6ではなく、Wi-Fi5規格の無線LANルーターですが、「デュアルバンド×6ストリーム」の組合せで、遜色ないスピード感を体感することができます。
「Deco S7」は3×3 MU-MIMO(5Ghz:3×3 & 2.4GHz:3×3)と計6ストリーム、つまり6つの通信経路を利用することで、通信遅延を軽減、データ通信速度を高めています。
最大通信速度もデュアルバンドで、合計1900Mbps(5GHz:1300+2.4Ghz:600Mbps)もあるので、日常的にインターネットを利用するだけではなく、4K動画ストリーミングもストレスなく楽しめます。
通信速度の計測(Deco S7単体)
まず最初に、「Deco S7」を1台設置して、電波のカバレッジと通信速度を計測してみました。
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電波は親機の「Deco S7」より離れるにつれて弱まり、通信速度は親機周辺では530Mbpsを計測しているのに対して、一番離れたところでは190Mbsまで低下しています。
とはいえ、単体での設置にも関わらず、190Mbpsもでているので、デュアルバンド×6ストリームの効果がうかがえる結果になりました。
特長2:メッシュWi-Fiで広範囲をカバー
「Deco S7」は、広範囲にネットワークを拡張する「メッシュWi-Fi」に対応しています。
メッシュWi-Fiとは、複数のルーター(アクセスポイント)を設置して、Decoの親機・子機間で相互接続できるようにすることで、ひとつの広域な網目状のネットワークを構成するシステムです。
大きく3つの導入メリットがあります。
❶Wi-Fiの届く範囲を拡張する
メッシュWi-Fiを使えば、親機から遠く離れた部屋や異なる階といった、家の中で電波が届きにくいところでも、Wi-Fiの通信範囲がすみずみまで広がり、安定したネットワーク環境をつくることができます。
ざっくり下図のようなイメージです。
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一般的に、親機と子機をあわせて2台以上でネットワークを構成しますが、子機を追加することでさらに電波が届く範囲を拡張することができます。
「Deco S7」の場合では、2台組み合わせると最大360㎡、3台組み合わせると最大520㎡の広さをカバーします。
❷複数機器が同時接続しても安定する
メッシュWi-Fi環境下では、親機も子機も同じルーターとして動作するため、接続する端末が増えても、1台のルーターに集中することなく通信負荷を分散させることができます。
結果、複数台同時接続したとしても、通信が安定します。
❸最適なWi-Fiに自動的に切り替わる
また、「スマートコネクト機能」により、SSID(Wi-Fiアクセスポイント識別名)が1つになるので、中継器で拡張したWi-Fiネットワークと違って、わざわざ主導でSSIDを切り替える煩わしさがありません。
もっとも快適に通信できるWi-Fiの周波数帯を自動的に選んで接続されるので、インターネットをより安定して利用できるメリットがあります。
通信速度の計測(メッシュWi-Fi導入効果)
ここでは、さらに「Deco S7」を1台増設、合計2台設置して、メッシュWi-Fiのカバレッジと通信速度を計測してみました。
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ご覧のとおり、単体設置の時と比べると、3~4LDKの広さでは十分電波がすみずみまでいきわたっており(緑部分)、通信速度も親機周辺では570Mbps、子機周辺でも350Mbpsと十分スピードがでています。
特長3:3つのギガビットポート搭載
「Deco S7」本体背面には、WAN/LANポート(1Gbps)を3つ搭載しています。
安定した通信が必要なTVやFire TVなど動画ストリーミングデバイスには有線で接続するなど、家庭内通信機器の用途に応じて、有線と無線を使い分けることができます。
WAN/LAN自動判別するので、どのポートに挿してもOK。
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余裕を持ったポート構成なので、別途スイッチングハブを追加することなく、機器のとりまわしができるのでとても使い勝手がよいです。
イーサネットバックホール活用で通信速度を改善
イーサネットバックホールのメリット
より通信環境を改善するために、ぜひ活用したいのが「イーサネットバックホール」機能です。
メッシュWi-Fiルーターの「Deco S7」は、イーサネットバックホールに対応しています。
イーサネットバックホールを使えば、Decoの親子機間で制御にかける通信を有線LANを使っておこなえるようになるので、Wi-Fiの通信帯域をフル活用できるようになります。
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わが家には各部屋にマルチメディア情報コンセントがあり、ブリッジモードに切り替えることで、この「イーサネットバックホール機能」を利用しています。
今回の検証にあたっては、「Deco S7」を下図のように有線×無線のハイブリッド構成で接続し、フルにDecoの性能が発揮できるように環境を構築しました。
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イーサネットバックホールの設定方法
現在のDecoの設定が「ルーターモード」が「ブリッジモード」なのかは、Decoアプリ画面で確認することができます。
Deco子機の「接続先」が「2.4GHz/5GHz」であれば無線接続のまま、「有線LAN」になっていればイーサネットバックホール機能を使っています。
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尚、イーサネットバックホール機能で使用するには、「Deco S7」の動作モードを「ブリッジモード」に切り替えておく必要があります。
動作モードの切替はアプリの「ルーター設定」で行います。
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参考 Deco間をLANケーブルで繋いで利用できますか?(Ethernet Backhaul)
参考 Decoをブリッジモードに設定をしてアクセスポイントとして使用するためにはどうすればいいですか?
通信速度の計測(イーサネットバックホール効果)
ここでは、ブリッジモードに切り替えて、「メッシュWi-Fi」×「イーサネットバックホール」の組合せによる、ハイブリッド環境下での通信速度を計測してみました。
上位回線1Gbpsの場合(新環境)
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ご覧の通り、時間帯にもよりますが、親機・子機周辺で600Mbps越えの結果です。
平均でも500-600Mbpsの間で安定しており、親機・子機間を無線で接続するよりも、比較的安定した高い通信速度を計測しています。
上位回線100Mbpsの場合(旧環境)
ちょうどネットワーク切替での検証タイミングだったこともあり、ご参考までに、以前の通信環境下(上位回線100Mbpsの共有LANタイプ)での計測結果も紹介します。
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こちらもイーサネットバックホールのおかげで、親機・子機とも上位回線の上限に近いスループットがでていることがわかります。
以上の結果からも、「Deco S7」は有線によるイーサネットバックホール機能を組み合わせることで、無線によるメッシュWi-Fiだけよりも、さらに通信速度を改善できることがわかります。
もし、あなたのご自宅がイーサネットバックホールを使える環境であれば、試してみる価値はあるのではないでしょうか?
「Deco S7」良かったところ&気になったところ
わが家の環境はIoT家電などが多いこともあり、Wi-Fi6対応のDecoシリーズ(Deco X50)を導入していますが、今回の検証からも、一般的なご家庭であれば、「Deco S7」で快適なメッシュWi-Fiネットワーク環境を構築することができるといえるでしょう。
「Deco S7」レビューまとめ
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総合評価:★★★★☆
以上、TP-Linkの「Deco S7」のご紹介でした。
「Deco S7」は、
が特長のメッシュWi-Fiルーター。
現在の自宅Wi-Fi環境にスピード面で満足できていない方や、部屋によってはWi-Fiの電波が届きにくいので改善したい方にとっては、おすすめの手軽に導入できるメッシュWi-Fi搭載のエントリーモデルです。
また、ネットワークは詳しくないといった初心者の方でも、箱からだしてコンセントに差し込んだら、あとはスマホのアプリのガイダンスに従って進めるだけで、すぐに使えるようになるので安心です。
わかりやすい!