週末にどれだけ寝ても、毎日十分な休息をとっているのに、身体の疲れが癒えないということはないでしょうか?
睡眠などでは決して解消しない、身体の疲れではない疲労感。
それは「脳疲労」と呼ばれています。
人間の脳は1日のエネルギー消費量の20%を消費しており、その60~80%を「とりとめのない考え(雑念)」に割いています。
自動車のアイドリングのように、何もしていない時でも常に何かを考えている状態にある、雑念状態にあるのです。
そして、その脳の雑念こそ、脳疲労の原因であり、脳疲労を解消する方法が「マインドフルネス」なのです。
そもそも私がこの「マインドフルネス」に関心をもったのは、世界中の実績のあるビジネスパーソンや有名なアスリート、アーティストまで広く実践しており、googleなど米国の大企業をはじめ多くの企業で取り入れられている、そのノウハウはいったいどういったものなのか、どのような効果があるのか?
そして、もし具体的な効果があるのであれば、どうすればマスターできるのかその方法を知りたかったからです。
これまで何冊かマインドフルネス関連の本を読みましたが、久賀谷亮さんの「脳疲労が消える最高の休息法」は、精神科医らしい脳科学の観点からわかりやすいイラストと平易な解説で、すーっと頭にはいってきました。
何よりも良かった点は、読んだ後にすぐに実践できる付録のCD(音声ファイルをダウンロードも可能)があり、初めてマインドフルネスを体験する方にとってとても良いペースメーカーになるところです。
これからマインドフルネスを始めたい方(特に入門者)には最初の1冊としてオススメです。
この本はこんな人にむいています。
- マインドフルネスをわかりやすく理解したい方
- マインドフルネスのやりかたを知りたい方
- マインドフルネスを日常生活にとりいれるきっかけを得たい方
- 頭がもやもやしていて常に疲労感があり、スッキリさせたい方
- 仕事やプライベートで集中力を高めて生産効率をあげたい方
- 日常的におこりうる怒り不快な感情をコントロールしたい方
「マインドフルネス」の基本的なやり方と効果
マインドフルネスは脳の休息法(脳のストレッチ)
「マインドフルネス」は一般的に定義すると、以下のような言葉で表現されることが多いです。
評価や判断を加えずに、”いまここ”の経験に対して能動的に注意を向けること
正直、抽象的になんだかわかったような、わからないような気がするのは、私だけではないと思います。
この本の中では、マインドフルネスを「瞑想をベースとした、脳の休息法」としてわかりやすく定義。
いわゆる瞑想における宗教性と修行の要素を排除した、徹底した実用性と誰でもできるシンプルさを兼ねそなえた、脳科学的にも実証された効果をもつスキルとして紹介しています。
一言で「脳のストレッチ」といえるでしょう。
脳疲労を引き起こす原因(雑念)
冒頭、人間の脳疲労は、「とりとめのない考え(雑念)」によるものと書きましたが、この「とりとめのない考え(雑念)」は、脳回路であるDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)が引き起こします。
DMNは雑念回路や自動操縦モードとも言われるように、脳が意識的な反応をしていないときも常に働いている状態です。
何も考えていないと本人が思っていても、潜在意識の中では常に雑念(過去や未来の心配ごと等)が発生しており、脳に負荷(ストレス)がかかっています。
脳疲労を解消するためには、マインドフルネスによる脳のストレッチによって、この雑念回路DMNを鎮めて、脳エネルギーの消費を抑制することがポイントになります。
基本的なマインドフルネスの実践法
それでは、マインドフルネス(脳のストレッチ)は、具体的にどのように行うのでしょうか?
脳科学的アプローチというからには、とても難しいイメージがありますが、基本的なマインドフルネスはとてもシンプルです。
- リラックスした基本姿勢をとり、目を閉じる
- 身体の感覚に意識をむける(接触の感覚や重力など)
- 呼吸に注意を向ける
- 雑念が浮かんだら、その事実に気づき、注意を呼吸に戻す
ただこれだけです。
実際にやってみるとわかるのですが、ものの1分もたたないうちに、呼吸に注意を向けている自分を忘れ、次から次へと雑念が浮かびます。
過去のこと、未来の心配ごとなど・・・浮かんでは消え、また浮かんでは消えていきます。
ただこれは人間の脳としてはよくあることで、脳は放っておくと過去や未来のことを考えようとする傾向があるからです。
この雑念こそが自動操縦モードになっている状態であり、DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)の所業なのです。
そして、この雑念状態(自動操縦モード)からの解放をおこなう方法が、マインドフルネスです。
つまり、このシンプルな一連のプロセスをふむことで、雑念回路であるDMNを司る脳部位の過剰活動が低下し、結果として脳のエネルギー消費が軽減されて、脳が休まるというわけです。
マインドフルネスの4つの効果+α
一般的に、マインドフルネスを継続的に実践することで、4つの効果が期待できると言われています。
- 集中力アップ(1つのことに注意を向ける)
- 感情調整力アップ(怒りや不安など感情的な反応がなくなる)
- メタ認知アップ(客観的な状況判断)
- 免疫力アップ(風邪をひきづらいなどの身体的耐性)
他にも老化による脳の萎縮にも効果があり、記憶に関する脳部位の密度が増すことで、記憶力アップにも貢献するものと期待されています。
マインドフルネスには脳疲労の解消だけでなく、わたしたちが将来的に抱えるであろう記憶力低下や認知症予防など、脳を活性化して脳構造そのものを疲れづらいものに変えていくことが可能なスキルといえるでしょう。
結果として、「疲れづらい脳をつくる」ということは身体がやすまることにもつながるのです。
集中力アップや感情調整力がつくことで、仕事や日常生活において生産性がアップ!
さらに、脳構造そのものをつくりかえ、身体にもやさしい「マインドフルネス」。
これはやらない手はないのではないでしょうか?
「マインドフルネス」のやりかた 7つのケース別休息法
基本的なマインドフルネス呼吸法を含めて、本書では7つのユースケースに応じて、7種類のマインドフルネスを取り入れた休息法が紹介されています。
- とにかく脳が疲れているとき→「マインドフルネス呼吸法」
- 気づくと考え事をしているとき→「ムーブメント瞑想」
- ストレスで体調がすぐれないとき→「ブリージングスペース」
- 思考のループから脱したいとき→「モンキーマインド解消法」
- 怒りや衝動に流されそうなとき→「RAIN」
- 身体に違和感・痛みがあるとき→「ボディスキャン」
- 他人へのマイナス感情があるとき→「メッタ」
脳疲労を感じるときから、考えごとをしているとき、怒りや不快感などの感情に流されているとき、体調がすぐれないときまで、実に様々なストレスのある局面でマインドフルネスを活用により柔軟に対処することができます。
いずれもベースにあるのは、客観的に自分をとらえて「いまここ」に意識を向けること。
まずは手始めとして、第1の休息法である「マインドフルネス呼吸法」から訓練することをオススメします。
呼吸に注意を向けることで「いまここ」に意識を向けるようになることから、マインドフルネス状態になるコツをつかむとよいのではないでしょうか。
最初は「呼吸」から始めた方がコツをつかみやすいのですが、それは気づきのターゲットとしてやりやすいからに他なりません。
他にも、外界や言動、身体などを対象に気づきをえるように意図的にマインドフルな状態になればよいのです。
歩く瞑想、食べる瞑想、身体を感じるボディスキャンなど、マインドフルになる訓練対象は多岐にわたるので、実際にご自身の取り組みやすいものがよいでしょう。
上記7つのケースであれば、この時、ペースメーカーとして付録のCD(音声ファイル)をスマホなどに取り込んで流しながらマインドフルネスをすると、トレーニングがはかどります。
「マインドフルネス」を習慣化することで疲れづらい脳をつくる
誰でも気軽にどこでもいつでも実践できる、マインドフルネス。
瞑想ベースとはいえ、決して宗教じみたものでもなく、現代人にあうように必要なエッセンスだけを抽出したスキルです。
もし、今あなたが私と同じように
- 特に何もしていないのに全身が疲れた感じがする
- 休日にゆっくり眠っても、頭が重たい
- 以前よりも集中力が続かず、すぎに気が散ってしまう
- 気づけば、いつも同じことを考えている
- 嫌悪感や怒りなどネガティブな感情がわきでてしまう
といったことから解放されたいと思っているのならば、ぜひ一度マインドフルネスの世界に触れてみるよい機会だと思います。
私もここ数週間ほど毎朝決まった時間に、付属の音声ファイルを聴きながら「マインドフルネス呼吸法」を実践していますが、徐々にその効果(コツ)を感じ始めています。
- 朝起床してから、洗顔・うがいをおこなう。
- 窓のカーテンをあけて太陽光を浴びる。
- そして、5分~10分程度の時間に集中して瞑想(マインドフルネス)する。
- 頭がゼロリセットされて、スッキリ感じた状態で出社する。
ただこれだけですが、気持ちよく朝のスタートダッシュがかけられるようになりました。
もちろん数日程度やっただけではなかなか体得できるものではありませんが、いかに自分の生活ペースの中で無理なく「習慣化」するのかがキーとなります。
ストイックにやるのではなく、ストレッチや朝の洗顔・歯磨きのように、自分のあった方法と都合のよい時間や場所で気張らずやることです。
あなたもマインドフルネスを日々の生活の中で取り入れることで、「さまよわない脳、疲れづらい脳」をつくり、より生産性のある、充実した生活を楽しみませんか?