私たち、非ネイティブにとって尽きることのない語学学習のモチベーション。
小学校での英語教育の早期化も定着している今となっては、英語は話せて当たり前の時代になりました。
特に年末年始は気持ちを一新して日頃の習慣を変えるには良いきっかけになるということで、語学関連でベストセラーになっていた英語学習方法に関する本を1冊、手にとってみました。
元イェール大学助教授で現在は中高生向けの英語塾を運営されている、斉藤淳さんの著書で「世界のネイティブエリートがやっている英語勉強法」の新書版です。
世界のネイティブエリートがやっている英語勉強法とは?
タイトルはキャッチーで、そんなにすごい魔法のような学習法が書かれているの?
と少しだけ期待していたのですが、内容は至ってシンプルです。
とはいえ、英語勉強中の私にとっては大変参考になるアプローチがありました。
基本的には「徹底した発音トレーニング」と「動画教材をつかったインプットとアウトプット」、この2本柱を実践すること。
ある程度英語なり語学学習をやっている方には当たり前の学習方法かもしれません。
ただその当たり前がなかなか実践できないのも事実です。
この本では語学学習のグラマー、リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングといった5つの領域に関する語学学習のコツがちりばめられていますが、基本的な考え方になるのが「TPR(Total Physical Response):全身反応教授法」です。
低年齢の子ども向けに語学を教えるときに、「Jump!」と先生が言ったら子どもがみんな一斉に跳ねるとか、「Throw a ball!」と言ったらボールを投げるとか。そういう身体動作を通じて学ぶと、語学が身に付きやすいというのは一般的に言われていることです。
イェール大学の非ネイティブを対象とした語学学習プログラムにはベースにこのTPRの発想があり、実際にここで学ぶ学生には非常に効果的であることが実証されています。「TPR」こそが非ネイティブの外国語学習者が効率よく語学を習得するコツとなるのです。
日本の学校英語教育は非ネイティブ学習者にとって非効率そのもの
それでは、「TPR」にそった学習プロセスとは具体的にはどういったものか?
まずは従来の日本における学習法、つまり「文法訳読方式」の学習プロセスは図にすると次のようなイメージになります。
「文法」と「単語」を学び、「文」を理解してから「状況」を想像するという流れです。
効率的に学習するためのTPRメソッド(全身反応教授法)とは何か?
次に「TPR」による語学学習プロセスです。
こちらは「文法訳読方式」の学習プロセスとは逆に、目の前にある「状況」に対応する「文法」と「単語」を結びつけていく方法です。
ここでのポイントは目の前に置かれた「状況」を把握し、理解を助けるために「動画」を使うことです。
「動画」を教材として用いることで、映像から視覚的な理解を得られるメリットがあります。
動画により「特定の状況」を把握しやすくなり、その上で英語を聴くことで英文そのものに集中することができます。
また、そこで学んだ単語だったり文法は、脳の記憶の中で映像に紐づくので忘れにくくなり、単純に単語集などで学習するよりも定着率が高まるというわけです。
これを繰り返すことで知識を蓄積して、立体的に体系づけることで確実に自分のモノとするのです。
効率的な学習のために、「動画」を活用すること。
これは私が過去に語学を始めた当時では考えられないほど、今ではネットが普及し、動画をはじめ有料・無料の外国語学習の教材となりうる良質の素材が手にはいるので教材には困らないでしょう。
昔話になりますが思い起こせば、当時は音声はアルクのヒアリングマラソン、映像はペイチャンネルWOWOWを有料契約し、レンタルビデオはクローズドキャプションの機器で字幕を表示させていました。
時事英語を学ぶために、Japan Timesも朝日新聞とあわせて契約してランチを食べながら読んでいました。
今の時代はこれから学習する人には効率的に習得できる教材や機会がある贅沢な環境で、もう少しこの時代が早くきていれば・・・とつくづく思います。
正しい発音を理解しない限り、聴き取る力は育たない
非ネイティブ学習者にとって効率的且つ有効な学習方法(TPRメソッド)は理解できました。
それでは具体的に「動画」を使ってどのように学習を進めていけばよいのでしょうか?
ポイントとして大きく2つあります。
まず1つめは、その前段階として「正しい発音」を理解することが大切です。
・語学のはじまりはまず「発音」を重視することが大切
・効率的に語学を学習するためには、まずは「発音」からはいるのが最短ルート
・語学には意識的に音を区別して発音する能力を身に着けない限り、動画や音声の教材を聴いても聴き取る力は育ちません
これまで私自身の経験からも、日本の学校ではそれほど「発音」について詳しく教えてもらったことはなかったように思います。
また、学習者である私自身もこの「発音」の学習は苦手意識があり、敬遠しがちであったことも事実です。
それだけになにはもとより、「発音」を理解することからはじめることは新鮮に感じられ、今回改めて「発音」に向き合ってみることからはじめてみようと思いました。
最終的には各個人の発音のクセを理解して適切な発音をコーチしてくれるような方が必要になるのですが、まずは自分でも正しく発音を理解するアプローチが可能です。
具体的に「発音」を学習する方法とは?
1.発音記号と音をリンクする
それにはまず、「発音記号」をよく理解することがポイントになります。
意識的にそれぞれの音を区別しながら聴いたり発音したりできるようになるために、「発音記号」を理解することから始めます。
音の違いを記号の違いに落としこむこと。
尚、教材としては以下のものが推奨されていますが、私は付属DVDの評価が高い、こちらのテキストを使います。
◆著者おすすめの参考図書
<初級者向け>
・『CD付 世界一わかりやすい 英語の発音の授業』(関正生 著/KADOKAWA)
<中級者以上>
・『DVD&CD付 日本人のための英語発音完全教本』(竹内真生子 著/アスク)
本の中では、フォニックス(Phonics)という発音練習(口の動かし方に注意を払いながら、アルファベットの音を正しく発声していく方法)を取り入れることで英語力につながることが紹介されています。
フォニックスとは、アルファベットや英単語の読み書きができない英語圏の子供たちが、幼児期に学習する英語教育です。
フォニックスの練習で効果的なのは、ネイティブの「口元映像」をみながら発音を真似することです。
発音教材のDVD映像をみながら真似をすることで、発音記号と音をリンクして理解することを目指します。
参考 The Sounds of American Engllish
アメリカのアイオワ大学には無料でこの「Phonetics」が学べるコンテンツがあります。
スマホ用のアプリもあり、こちらは有料です。
2.シャドーイングにより「発音」を体得する
そして発音記号と音の関係を理解できたら、次に発音の基礎をつくるためには「シャドーイング」が効果的です。
「シャドーイング」とは聞こえてきた英語音声とほぼ同じタイミングで、その音を発声していくトレーニング方法です。
シャドーイングを繰り返すことで、自然に正確なリズムやイントネーションを身に着けることができるようになります。
最初は単語レベルから徐々に文章単位でトレーニングしていきます。
教材としてはアルクの「完全改訂版 起きてから寝るまで英語表現700」などがすすめられています。
こちらはスキマ時間で練習できるスマホのアプリが個人的にはオススメです。
動画教材をつかったインプットとアウトプットを繰り返す
「発音」を理解するのと同時に行うのが、スクリプトのある「動画」を使ったリスニングとディクテーションを行うこと。
これがTPRメソッドの2つめのポイントです。
具体的な学習方法としては、
1.英語字幕で動画を視聴する
2.字幕をオフにして動画を視聴する
3.わからないところがあれば、スクリプトを参照して調べる
をただひたすら繰りかえすこと。
新しい教材をどんどんこなすのもよし、おなじ素材を繰り返し視聴することも効果的。
難易度をあげる場合は、映像のある動画ではなく、オーディオブックを使って、スクリプトをなぞりながらリスニングすることで英語のリズムを学びます。
また、スクリプトをなぞるだけではなく、ニュース動画や音声コンテンツを使った書き取り(ディクテーション)は効果的です。
教材としては、CNN動画ニュースやNHK WORLD RADIO JAPANがよいでしょう。
私はPCでのディクテーションでは、WORDやテキストエディターとあわせて、音源再生用に文章書き起こしに特化したアプリケーションを活用しています。
Windows版ではフリーソフトの「okoshiyasu2」は、タイピングしながら、キーボードを離れず操作できるので重宝しています。
またバックグラウンドでも再生できるのでWEBサイトや動画をみているときでも操作できるので便利です。
教材としては上で書いた動画コンテンツ以外にも、NHKラジオの語学講座を活用する手もあります。
とにかく教材は自分の興味のあるジャンルからとっかかるのがモチベーションも続くでしょう。
私の場合は、以前紹介したラジオ講座をダウンロードするツールを使うことでPCに取り込み、ディクテーション用のツールを使って繰り返しディクテーションをおこなうことを来年度に向けての目標としたいと思います。
非ネイティブエリートがやっている英語勉強法のまとめ
以上、イェール大学の非ネイティブ学生のための学習プログラムに活用されている、「TPR(Total Physical Response):全身反応教授法」をベースにした学習法のご紹介でした。
「発音トレーニング」×「動画」の活用により、非ネイティブが効率的に語学を学ぶことができるTPRメソッド。
まず初めに全ての基礎となる「発音トレーニング」をきっちりやって、「発音記号」と「音」をリンクできるようになること。
そしてシャドーイングで訓練することで「発音」を体得すること。
また、教材として状況を視覚的に把握できる「動画」を活用し、リスニングやディクテーションを繰り返し行うことにより、効率的に語学を体得することができることを学びました。
シャドーイングやディクテーションは昔からある手法なので馴染みはありましたが、それよりも基本の発音記号と音をリンクさせることに注力すべしとのアドバイスは私にはとても新鮮でした。
当たり前のことなのにできていないことを、改めて認識するよいきっかけとなり、来年度に向けてまずは取り組むべき目標として設定したいと考えています。