人生100年時代、これからは定年60歳の時代は終わり、ますます長く働き続けていくことが必要になってくることは、誰もが直面している課題です。
私も今の会社で働き続けのかは別として、やはりこれまで働いてきた期間以上にこの先も働き続けようとは漠然とながらではありますが考え始めている今日この頃です。
とはいえ、まず何からはじめてよいのか?
なかなか手付かずになっていたのですが、書名に魅かれて手に取ったのがこの「自分マーケティング」です。
「自分マーケティング」とはいわゆるセルフブランディングではありません。
「自分マーケティング」とはセルフマーケティング、つまり自分自身の価値を高めて売り込む術のことで、その他大勢から、そして人生において感じている何らかの閉塞感から抜け出すために自分自身を売り込むためのマーケティング活動です。
実績がある人であればブランディングは必要ですが、大半の凡人は実績がなくよく知られていないので、ブランディングよりもマーケティングが大切になってくるのです。
この本で学べることは以下の3つ。
- あなたを売り込むための商品価値(セールスポイント)を知る方法
- 商品価値を高めるために必要な3種の神器
- あなたの商品価値を「一点突破」でアピールする方法
これら3つのポイントを学ぶことで、自分ならではの商品価値を見出すことができ、さらにそれを高めていくことで、これからの長い人生を生き抜いていくことができるのです。
あなたを売り込むための商品価値(セールスポイント)を知る方法
自分の商品価値を分析する
あなたは自分のセールスポイントを15文字以内で表現できるでしょうか?
「自分マーケティング」で大切なことは、まずは自分という商品価値を知ること。
そもそもマーケティングをしないと商品が売れないように、誰もあなた自身の存在に気づかず、あなたという商品を買ってくれないからです。
そのためにはまず最初に、あなた自身の「商品価値」をしっかりと客観的に分析して見極めるところからはじめること。
その上で、自分の商品価値を市場のニーズとすり合わせる作業を継続して怠らずやっていくことが、これからのライフシフトの時代には求められるスキルです。
経験ではなく、普遍的な仕事力が重要
これから先の長い人生において大切なのは「経験そのもの」ではなく、そこから学んだ「普遍的な仕事力」です。
何でもできます、何でもやりますというのは、結局なんの強みもありませんと宣言しているのと同じこと。
これまでの仕事などを通して学んだ様々な経験の点と点をつなぎあわせたり、組み合わせたりすることができれば、大きな「武器」になる可能性があるのです。
Apple CEOだった故スティーブ・ジョブス氏の2005年スタンフォード大学卒業式スピーチがとても印象深いです。
You can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future.
(将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。)
全文翻訳 ジョブズ氏スピーチ全訳
動画 ジョブズ氏スピーチ全訳 (Youtube)
商品価値を高めるために必要な3種の神器
ここでいう3種の神器とは、「自分マーケティング」を行う上で、「自分の強み」をわかりやすく表現したものであり、「自分の商品価値」を高めるものです。
著者はその3つを以下のような言葉で表現しています。
- 相手の心を突き刺す「剣」=旗印の1行(川上コピー)
- あなたを輝かせる「鏡」=プロフィール
- 幸運を運んでくれる「玉」=タグ
この3つをもう少しわかりやすくシンプルに書くと、
- 旗印の1行=自分の志や目標をビジョンとして示したもの
- プロフィール=ストーリー性を持たせた自己紹介
- タグ=自分の特徴を一言で表現できるキーワード群
となります。
特に2のプロフィールは、いちばん力をいれるべきところで、これを最初の段階で丁寧につくることで人を動かすことにつながります。
ポイントとしては、現在(現在の肩書や活動)、過去(現在の活動につながる過去のポイント)、未来(自分が実現させたい未来)の順番で書く。
そして、具体的な数字をいれることでより具体化されます。
さらにはシーンに応じて使い分けることができるように、ショートバージョンとロングバージョンを作成しておくこと。
「自分マーケテイング」では、まずこの3種の神器を固めてから、一点突破でアピールするための戦術を考えます。
あなたの商品価値を「一点突破」でアピールする方法
人のいないところを探して一点突破
「自分マーケティング」では、自分の商品価値を見極めることができたら、次は相手から自分という商品を見つけてもらうこと。
それは、競合するその他大勢の人がいない場所を探してそこを深堀していくこと。
まずは欲張らずに1点突破でアピールする。
もちろん、そこからさらに自分マーケティングを行い、横に広げていくことも可能です。
「自分が自然と努力できること」の土俵をみつけて、そこでの勝負に徹することが「自分マーケティング」では重要といえます。
自分だけの公式(XとYの公式)をつくる
「自分マーケティング」を考える上で、自分だけの「公式」をつくるとわかりやすくなります。
島田紳助さんの言葉を借りれば、「XとYの要素を徹底的に考える」こと。
ここでいう、X=「自分軸」、つまり「自分に何ができるのか、自分の戦力」の軸。そして、Y=「世の中の流れや変化」の軸です。
まず公式のXである「自分の強み」を洗い出すこと。
手順としては、1と2について洗い出したら、次は3を発見するステップに進む。
- 自分が知っている強み(表裏一体の弱みも)
- 他人からみた強み
- 自分も他人も気づいていない潜在的な強み(最強の強み)
自分の商品価値(X)は人によって違うので本人しかわからないので、ここは徹底的に書き出します。
そして、忘れてはならないことは自分マーケティングには終わりはない、ということ。時代が変われば、場所が変われば、求められるものは違ってきます。
商品価値(X)を見極めた上で、常に時代(Y)にあわせて、自分マーケティングをしながら、少しづつスタイルを変えていくことで、自分の商品価値を高めて売り込んでいく努力は必要です。
一点突破するための、9つの戦術
自分の強み(X)がわかったら、以下の9つの戦略の中から、どれが自分ができるのか考えてアピールしていく。
その際、「受けて目線で考える」、または「発信者目線で考える」の2つの方向性に分けられます。
また1つのジャンルで飛びぬけない場合は、複数のジャンルを掛け合わせることで希少性を高めることができます。
基本的に「受けて目線で考える」戦術は打率が高く、「発信者目線で考える」場合は当たれば大きい戦術ですが、後者の戦術でもある程度「受けて目線」を取り入れた方が打率が上がる傾向にあります。
- 戦術1:業界の「あたりまえ」を言語化して発信する (受け手目線)
ー 業界では当たり前だけど、外の人がきくと感心するような知識やノウハウ - 戦術2:自分が興味あることにどっぷりハマる (発信者目線)
ー 感情が沸き立つほど興味があること、好きだったりすることを究めること - 戦術3:誰かの役に立つことを徹底的に提供する (受け手目線)
ー 誰かの役に立つことを探し、それを追及する - 戦術4:狭い分野でナンバー1になる (発信者目線)
ー 自分がナンバー1になれる可能性のある、勝ち目のある市場にまで絞り込み、そこで戦う - 戦術5:ノウハウを法則化してわかりやすく伝える (受け手目線)
ー 今まであまり語られてこなかったノウハウをきちんと法則化して伝える - 戦術6:とにかく自分が欲しいものを作る (発信者目線)
ー 自分がものすごくほしいことは、同じことを思っている人が必ずいる - 戦術7:自分に求められているものを提供する (受け手目線)
ー 自分に求められていることを優先して、それを提供していくこと - 戦術8:わかりやすいキャラを構築する (発信者目線)
ー 受け手にとってその人を認識しやすくなる - 戦術9:2つのジャンルを掛け合わせる(受け手と発信者目線の組み合わせ)
ー 掛け合わせることで、希少性を高める
それぞれの戦術の詳細は著書をご参照いただくとして、特に私が興味をもったのは「戦術9」の2つのジャンルを掛け合わせること。
私の地元である奈良県の元高校校長であった、教育改革実践家の藤原和博さんの言葉には納得感がありました。
まずひとつの分野で1万時間を投じて努力する。
1万人に1人のレベルは難しくても、誰でも100人に1人くらいのレベルにはなれる。
1%の人として、希少性あればプロとして食べていける。
さらにもう一つの分野に時間を投じて100人に1人のレベルになること。
この2つを掛け合わせると、「1万人に1人」のレアカードになれる。
さらにどんどん組み合わせると、どんどんスーパーレアカードになれる。
出典:藤原和博「必ず食える1%の人になる方法」
私個人的には、これまでの経験値から需要が高い(受け手のニーズが高い)戦術1や戦術3、戦術5、戦術7あたりが、まず最初に取り組みやすい戦術だと感じました。
「自分マーケティング」でライフシフトの波に乗る
人生100年時代。これからは人生全体を設計し直さなければいけない。
誰もが「自分の強み」を認識して、ライフシフトしなければいけない時代です。
自分の軸(X)を見極め、世の中の流れ(Y)とともに常に自分マーケティングしながら進化していく。
では、「何からはじめるのがよいのか?」「何から手をつければよいのか?」
まさに今現在このように考えあぐねている方、閉塞感に陥っている方は、ぜひこの「自分マーケティング」を手にとってみましょう。
持続的なライフシフトを実践するためのヒントを知ることができます。
残念ながら新書形式のため、実践書というよりはサクッとキーポイントの整理だけにとどまっていますが、著者の得意分野であるエンターテイメント業界での事例を通して、わかりやすくその自分の強みをアピールするコツについて体系的に整理されているので、すっと頭にはいってきます。
ライフシフトに向けて、最初の一歩を踏み出すきっかけや気づきになれば幸いです。